2013/05/19

フィルムカメラの修理とコミュニケーションについて

Leica M3, Summicron 5cm f2
今年の初め頃、いつも使っているライカに、右側が黒くボヤける現象が出るようになりました。
シャッター周りの経年劣化で幕動作に支障が出たようです。

そこで私は、いつもお世話になっている修理店でライカを診てもらうことにしました。
そこは技術に定評があり、そして、持ち込んだライカをなかなか褒めてくれない修理店です。

私の場合も例外なく、買った店のこと、ライカの状態、私の使い方、その全てに忌憚無き評価が下されます。
他の方の話を耳にする限りでは、ひどく落胆したり、憤ったりする方もいらっしゃるようです。
大切にしてきた愛機が「あちらこちらが無事では無い」と言われるのですから、その心情もお察しします。

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この修理店の店主を理解するためのたった一つのキーワードは、「職人」です。

職人になると、修理痕一つで色々なことが読めるようになるようです。
どこの誰が、どのようなレベルの人が、どんなことを考えてどういう修理を施したか。その結果、どのようなことが引き起こされるのか。
それはライカ本来の性能を知っていて、それが正確に100%引き出せないことも知っていて、限りなく100になるよう仕事をしながら、それとは遠い仕事を目にするということ。

100%を超える期待をしばしする顧客に対して、職人としてのプライドと責任感はジレンマとなります。

これは本来の100%ではない、しかし今出来る限りの100%はここまで出来る。そのことを正確に伝えようとすると、職人らしい忌憚なき台詞として表現されるのです。


私は、職人を信頼をしています。
また、職人が魔法使いでないことも知っています。
あるべき姿を目指して仕事をし、100%に至らなかった部分を包み隠さず報告することに尚更信頼をしています。

それが、何を言われようとこの修理店を利用している理由です。

商売として愛想が良くても機械は良くなりません。機械にとっては技術が全てなのです。
そして、機械に対して愛想良く話を出来るのが職人なのです。

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本日の写真は、とある店で買ったレンズで写したものです。
この写真で絶対にピントが来ないと分かり、いつもの修理店にて同じ型のレンズを買いました。
信頼とはこういうことなのです。

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